量子コンピューティングセンター

センター長 : 山本 直樹(理工学部 教授)
活動拠点キャンパス : 矢上

センター概要

量子コンピュータとは、"量子力学的な効果を用いて行う複雑な計算"(量子コンピューティング)を実現するデバイスである。素因数分解や最適化といった問題では、計算時間(ステップ数)が問題の規模に対して指数関数的に伸びるものがあり、それらは従来コンピュータでは計算不可能な問題とされる。量子コンピューティングはこれらの計算困難な問題を解決することが期待されており、それを実現する手法の開発が望まれている。
そこで、本センターでは、社会や産業界の発展に資する量子コンピュータで解くべき問題を特定し、その目的に向けたソフトとハードを開発することを目的とする。とくに、国に加えて、複数の民間企業が出資する研究拠点を整備し、産業界や一般社会に存在する問題を対象とした量子コンピューティングの道を切り拓くことを目指す。

キーワード・主な研究テーマ

量子コンピューティング、量子コンピュータ、量子情報処理、量子アルゴリズム

2019年度 事業計画

■2018年度より継続する活動内容について、継続する背景・根拠と目標

  1. 新規モンテカルロアルゴリズムの開発と実機評価:2019年度の目標は、アルゴリズムをさらに精緻化・高速化するための手法の開発を行うことである。そのためにIBM Qを用いて実機での性能評価を行い、また統計解析を行う。さらに金融工学における問題に開発アルゴリズムを適用する。
  2. 化学反応計算のための変分型量子アルゴリズムの開発と実機評価:2019年度の目標は、開発アルゴリズムの問題点を洗い出し、より現実的かつ小規模系で有効性が期待されるアルゴリズムの開発を行うことである。とくに、VQEが内包する量子計算機部分の最適化アルゴリズムについて検討し、精度向上を目指す。同時に、IBM Qを用いて実機での性能評価を行う。
  3. 量子パターン分類器の開発と実機評価:2019年度の目標は、データ埋め込みの問題をさらに検討し、シミュレータおよび実機による検証を行うとともに、手法を多分類問題に適用できるように拡張することである。
  4. 量子コンピュータインターフェイスの開発:2019年度の目標は、この結果を拡張し、アルゴリズムを効率よく実装するためのコンパイラ開発を行うことである。そのため、IBM Q専用プログラミング環境であるQiskit(Quantum Information Software Kit)においてQASM(Quantum Assembly Language)を生成する際に、IBMの公開しているエラー情報を自動抽出する機構を整え、それを基に最終フィデリティの最適化を行うコンパイラを開発する。

■2019年度の新規活動目標と内容、実施の背景

前項記載の研究プロジェクトに継続して取り組む。

2018年度 事業報告

■当該年度事業計画に対する実施内容、および研究成果と達成度

センターは IBM が開発した量子コンピュータ実機 IBM Q を利用できる環境 IBM Q Hub を内包している。2018年度は、この IBM Q Hub と協働しながら、以下の研究を実施し、成果を挙げた。

  1. 新規モンテカルロアルゴリズムの開発と実機評価:モンテカルロ計算は、材料科学・金融工学など多くの産業課題で要求されるプロセスである。量子計算でこのプロセスを高速化する理論研究がいくつかなされているが、それらは条件付きゲート操作と量子フーリエ変換を要するゲート回数が長いものであり、ノイズに対して頑強でない。そこで、短い量子回路を繰り返し用いる新規量子アルゴリズムを開発する。本年度は、基本的なアルゴリズムの開発を行った。
  2. 化学反応計算のための変分型量子アルゴリズムの開発と実機評価:近年、Variational Quantum Eigensolver (VQE)という、ハミルトニアンの基底状態を求める量子アルゴリズムが提案され、その有効性が小分子系(水素分子など)で確認されている。本年度は、VQEを意味のある小分子系に適用し、IBM Qシミュレータによりその精度を評価した。
  3. 量子パターン分類器の開発と実機評価:量子計算機を人工知能分野へ展開するための第一歩として、パターン分類を量子計算機で高速に実行するアルゴリズムを開発する。従来よりいくつかのアイデアが提案されているが、データの特徴量を量子状態の空間に埋め込むための効率的なアルゴリズムはまだ見つかっておらず、量子計算の有効性はまだ限定的である。本年度はとくに2分類問題に限定しこの問題の解決法の検討を行い、IBM Qシミュレータによる検証を実施した。
  4. 量子コンピュータインターフェイスの開発:アルゴリズムと実量子計算機IBM Qを効率的に結びつけるソフトウェアを開発することを目指す。これによって、はじめて、開発アルゴリズムの実質的性能評価ひいては将来の大規模量子計算機が扱える問題のサイズ見積もりが可能となる。本年度は、その基礎段階として、小規模の量子ビットマッピングの問題を考察した。すなわち、量子計算機のどの量子ビットを選択し用いるかは自明ではないが、その効率的な選択法を考案した。

■公刊論文数(件数と主たる公刊誌名)、学会発表件数(国内・国際)、イベントなど社会貢献の実績(年月日、場所)

公刊論文8件(下に記載)、学会発表45件

所員

所員(兼担)

山本直樹  理工学部 物理情報工学科 教授
伊藤公平 理工学部 物理情報工学科 教授
神成文彦 理工学部 電子工学科  教授
白濱圭也 理工学部 物理学科 教授
早瀬潤子 理工学部 物理情報工学科 准教授
バンミーター, ロドニー 環境情報学部 専門  教授
青野真士 環境情報学部 専門  准教授
古池達彦 理工学部 物理学科 専任講師
鹿野豊 理工学研究科 特任准教授
鈴木洋一 理工学研究科 特任准教授
渡邉宙志  理工学研究科 特任講師
佐藤貴彦 理工学研究科 特任助教
上西慧理子 理工学研究科 特任助教
植松真司 理工学研究科 特任教授

所員

宇野隼平 先導研究センター 共同研究員
大西裕也 先導研究センター 共同研究員
小野寺民也 先導研究センター 共同研究員
高玘 先導研究センター 共同研究員
須藤翔太朗 先導研究センター 共同研究員
滝本嘉夫 先導研究センター 共同研究員
田中智樹 先導研究センター 共同研究員
永井智樹 先導研究センター 共同研究員
中村肇 先導研究センター 共同研究員
RUDY RAYMOND HARRY PUTRA 先導研究センター 共同研究員
渡部絵里子 先導研究センター 共同研究員
渡辺日出雄 先導研究センター 共同研究員