先端光波制御研究センター

センター長 : 神成文彦(理工学部教授)
活動拠点キャンパス : 矢上

センター概要

慶應義塾では、文科省予算のもと先端光量子科学アライアンス(先端光波制御活用技術)として、東大、理研、電通大、東工大と連携拠点を構成し、(ⅰ)フォトンリング施設の研究開発協力および利用研究の推進と(ⅱ)高強度レーザー実現に向けた材料科学の項目を主に分担するとともに、本研究プロジェクト開始からの継続的研究課題推進と合わせて研究を実施する。
具体的な課題として、

  1. 時間空間制御プラズモン反応場形成のための超広帯域ベクトル整形レーザーパルスの開発
  2. ナノスケール結晶構造ダイナミクスの解明とナノイメージング計測への応用
  3. 周波数コム光源と光波制御技術の融合研究
  4. 青色半導体レーザー励起Pr:ZBLANファイバーレーザーとそのモード同期発振
  5. フェムト秒光波制御技術の開発
  6. トロイド光共振器における四光波混合を利用したモードロック光源の開発
  7. テラヘルツ電磁波の精密偏光計測およびその活用技術の開発
  8. ダイヤモンド中窒素空孔中心の作製とナノ光源及びナノセンサーへの応用
    の8つを扱う。

キーワード・主な研究テーマ

超高速光科学  レーザー工学  近接場光学  ナノ反応場科学

2017年度 事業計画

■前年度より継続する活動内容について、継続する背景・根拠と目標

2017年度も文科省からの当該プロジェクト予算が交付される予定であり、2016年度の01.~08.の研究テーマについて、新しい光源技術の開発とその応用を目的とした研究を継続して進める。いずれのテーマも2017年度末での完成を目標に進めている研究である。
また、引き続きセミナー、シンポジウムを主催し、光科学技術の発信と人材育成に務める。

■2017年度の新規活動目標と内容、実施の背景

文科省からの予算のもとセンターを設置して研究を継続してきた10年目に対応する。2012年より連携拠点としての研究目標が以下のようにあらたに設定されたのを受けて、この内容に即した研究内容の見直しを行い、とくに光源開発に研究資源を集中する。

  1. )周波数の完全制御による国際周波数標準の実現と普及に向けた基盤技術開拓
  2. )超短パルス光の完全制御による、X線~テラヘルツ域コヒーレント光源の開発と利用
  3. )高帯域光増幅の完全制御による、超高強度光の生成と利用
この研究内容に即して、最終年度は以下のテーマを実施する。
  1. 相変化材料による局所的演算・記憶要素の空間相関形成とコンピューティング機能の発現
  2. 新しい広帯域かつ狭線幅な赤外分光法
  3. 微小光共振器を用いた省エネルギー光周波数コム光源開発
  4. フォトニック結晶工学のシリコンフォトニクスとの融合
  5. 周波数コムのモード間量子相関制御による大規模クラスター状態の生成
  6. 超高速バーストイメージング法による非反復現象のイメージング
  7. 可視域ダブルクラッド型ファイバーレーザおよび可視域用酸化物レーザー媒質の開発
  8. テラヘルツ電磁波の精密偏光計測およびその活用技術の開発
  9. ダイヤモンド中窒素空孔中心の作製とナノ光源及びナノセンサーへの応用
尚、拠点形成予算に加えて、これまでの光波制御研究の成果を、深紫外域レーザの革新的技術として育成し、また、ナノフォトニクスを物質系の複雑系物理に展開する研究、および量子シミュレータを光学的に実現する研究を構築するための議論を進めており、随時、予算獲得の活動を行う。

2017年度 事業報告

■当該年度事業計画に対する実施内容、および研究成果と達成度

  1. アルミ製のテーパーチップの先端約35nmの直径に波長400nmと800nmのフェムト秒プラズモンパルスを集光電波させることに成功し、ラマン共鳴4波混合をもちいて、グラフェン、カーボンナノチューブの振動モード選択コヒーレント反ストークスラマン散乱イメージングに成功した。さらにこのプラズモン集光法を用いた酸化グラフェン還元によるナノグラフェンの作成を行った。
  2. 相変化材料に書き込まれた2次元パターンとキャビティモードの電場分布のマッチングに応じた光学スペクトル(共鳴モードのスペクトル)の変化を実験により確認し、2次元情報の1次元スペクトルへのコーディングを実証した。
  3. 周波数コムにより制御された中赤外差周波光源を用いてフォスフィン分子のサブドップラー分解能分光を実施した。
  4. 青色半導体レーザー励起を20Wまで増大させることで、可視域レーザー出力のスケーラビリティを調べるとともに熱負荷による影響を調べた。今後、更なる高出力な青色半導体レーザーを励起に利用するためには、熱特性に優れたPr3+, Mg2+:SrAl12O19およびPr3+:YAP, Pr3+:YAGの使用が不可欠であることから、可視レーザーとしては前例のないセラミックスの製作を行った。焼結前のスラーリー状態に磁場を引加えるすることで前2者が配向して焼結されることを確認した。成長を行い、発光特性を計測した。また、この2軸性結晶をセラミックス材料として作製するための強磁場印加装置を開発した。また、受動Qスイッチ用の過飽和吸収体として緑波長でも使用できるCo:MALO結晶の特性を調べ、受動Qスイッチおよび共振器内SHGを緑色ではじめて実現した。
  5. 1パルスで25フレームの超高速イメージング計測ができる装置をサブナノ秒の時間窓に拡張できる光学系を導入し、レーザーアブレーションプルームの発生をシングルショットで確認した。また、THz発生装置を構築し、THz波のハイパースペクトルイメージを1パルスで計測できる実験系を開発した。
  6. マイクロ光共振器の構造分散を適切に設計することで、異常分散を実現しモード同期した超高速な繰り返しパルス光を得た。また、微小共振器を結合すれば共振波長がモードスプリットとするが、そのモードスリット幅を正確に制御して、ブリリュアンゲインの周波数と一致させることで、ブリリュアンレーザーを実現した。
  7. テラヘルツ偏光計測によるゴム材料の内部ひずみ検査技術開発を拡張し、2次元イメージング検査を可能にした。
  8. ダイヤモンド中窒素空孔中心を用いた高性能なナノ光源やナノセンサーを実現することを目指し、これまで行ってきた基板微細加工と窒素ドープ化学気相成長の条件の最適化を進め、窒素空孔中心のさらなる高輝度化と高感度化を目指した改良を行った。

■公刊論文数(件数と主たる公刊誌名)、学会発表件数(国内・国際)、イベントなど社会貢献の実績(年月日、場所)

  • 公刊論文数 31件
    Appl. Phys. Express, Applied Physics Letters, Optics Express, Aplied Optics, Sci. Report, 等
  • 学会発表件数(国内64件,国際92件)
  • センター主催セミナーおよびシンポジウム(1件)
    第38回先端光量子科学アライアンスセミナー「「慶應義塾大学が挑む光波制御による新しい光科学」 2018年3月2日 慶應義塾大学来往舎

■センター活動を通じて特に成果を挙げた事柄

当該センターは文科省の光拠点形成プロジェクトにおいて,慶應義塾大学が連携拠点として参加するための組織としての意味を有しており,所員間での共同研究による研究プロジェクトの推進のみならず,シンポジウムを主催し光科学技術を発信するための事業を推進することで貢献できた。また、次期の研究費獲得に向けて申請における連携も行い、2017年度JST CREST研究(5年間)に採択されるに至った。また、2018年度からの文科省Q-LEAPプログラムにおいても、東京大学と連携して申請すべく検討を進めている。

所員

所員(兼担)

神成文彦 理工学部 電子工学科 教授
岡浩太郎 理工学部 生命情報学科 教授
斎木敏治 理工学部 電子工学科 教授
佐々田博之 理工学部 物理学科 教授
チッテリオ,ダニエル 理工学部 応用化学科 教授
渡邉紳一 理工学部 物理学科 准教授
田邉孝純 理工学部 電子工学科 准教授
早瀬潤子 理工学部 物情工学科 准教授

所員

下井利修 先導研究センター 共同研究員
菊池瞳子 先導研究センター 共同研究員