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2025年1月16日(木)に負の遺伝観を覆すことは可能か―行動遺伝学・進化教育学からの挑戦を開催します。

 ヒトも生物の一員であるから、心身問わずそのあらゆる形質に遺伝の影響が見出せることは、地球が丸いのと同じように当然の事実である。にもかかわらず、特にヒトの心理的・行動的形質に関しては、それを認めることが差別の正当化や優生学・優生思想につながるとして、近代の社会科学や政治思想においてはタブー視され続けられてきた。差別を正当化してはならないのは人倫の基本である。

 しかしそのために遺伝の科学的探究そのものを悪とみなす「負の遺伝観」、あるいはエピジェネティクスなどを強調して遺伝要因を環境との相互作用の中で相対化させる発生生物学的生命観も知的欺瞞と思われる。

 行動に及ぼす遺伝の影響を知る手掛かりとなる双生児法による行動遺伝学研究や、最近のGWASとそれを用いたpolygenic scoreの研究をふまえ、さらに脳の能動的推論や教育の進化的機能を考慮すると、遺伝要因の心理的・行動的形質への影響の確率論的ふるまいは、社会的存在としてのヒトの生活史や社会形成のダイナミズムにおいて重要な機能を担っていることが理解でき、この「負の遺伝観」のイデオロギーを中和して、科学的に健全な方向に向かうことが期待できる。とはいえ、依然として人々に根強く巣くう「遺伝=親子間の形質の伝達(類似性)」「遺伝=宿命的決定論」といった素朴遺伝観の中にその知見を投げ込むことが、「新しい優生学」を助長する危険も否めない。

 こうした状況で、科学者や科学メディアがどうふるまうべきか、みなさんと考えたい。

【開催日時】
2025年01月16日(木)16:30〜18:00

【参加対象者】
どなたでもご参加可(一般・学生・教職員)

【費用】
無料

【事前申込】

フォームからお申込みください。

【開催場所】
日吉キャンパス 来往舎2階大会議室

【主催等】
自然科学研究教育センター

【問い合わせ先】
慶應義塾大学 自然科学研究教育センター 事務局 (日吉キャンパス来往舎内)
〒223-8521 横浜市港北区日吉 4-1-1
Office[at]sci.keo.ac.jp

内容等の詳細についてはこちらをご御覧ください。