デジタルトランスフォーメーション(DX)や人工知能(AI)が競争優位性を再形成するなか、企業はイノベーションや効率化の推進のため、データ資産に依存するようになっています。しかし、データプライバシーやデータセキュリティに対する規制強化によって、企業は新たなコンプライアンス上の負担を課されています。そこで、本講演では、企業によるデータ保護規制への対応について、特に、強制的な規制による圧力と競争力や業界全体のデータ漏洩の観点から生じる自主的な圧力の双方に着目し、企業の財務パフォーマンスに与える影響について検証します。
企業は、(年次報告書における企業情報開示が示すような)データ保護への関心の高まりや、高度なデータセキュリティ技術やデータに関連する組織的な体制を含めた新たなデータガバナンスの導入を通じて、規制遵守を表明しています。しかし、これらのシグナルにもかかわらず、企業の市場価値は平均的に低下します。データ保護の強化というシグナルは、確かに厳格な規制への対応力を示しますが、データ保護が無形であるという性質やデータ保護の有効性を市場関係者に対して信憑性高く伝えることが難しいことから、競争的差別化にはつながらないと推察されます。
企業は、短期的に明確な収益を得ることなく、多額のコンプライアンスコストを負担します。規制は、研究開発(R&D)における投資を増加させますが、特許出願件数を減少させます。もっとも、高度な技術力を有する企業、特に、独自のデータ処理技術を有する企業や市場シェアの大きい企業は、コンプライアンス対策をより効率的に実施できるため、悪影響を受けにくいのです。
*この研究会は、CPS研究会の一環としてJSTムーンショット型研究開発事業JPMJMS2215の支援を受けています。
【登壇者】
コーネル大学 アイジャ・ライポーネン教授
【開催日時】
2025年4月17日(木)16:40~18:10
【開催場所】
慶應義塾大学三田キャンパス 南校舎2階 421番教室
【形式】
対面(会場)参加 ※オンラインはありません。
【参加対象者】
どなたでも参加可
【言語】
英語のみ
【費用】
無料
【事前申込】
不要
※定員:200名
【主催】
慶應義塾大学サイバーフィジカル・サステナビリティ・センター(CPSセンター)
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