ちょうど30年前にオウム真理教団によって引き起こされた地下鉄サリン事件は、宗教的な集団が「先進国」の都市の真ん中で引き起こした無差別テロとしては、世界で初めての出来事であった。このとき、世界中の人は「こんなことが起きるのか」と驚いたのだが、その後の短い歴史を振り替えると、2001年の911テロをはじめ、アメリカやヨーロッパの大都市では、いわゆる原理主義者たちが何度もテロを引き起こしてきた。オウム真理教によるテロは、21世紀の政治・宗教的現象の予兆のようなものであった。
有名大学の学生や出身者等の知的エリートをおもなメンバーとしていた教団が、どうしてあのようなテロに走ったのか。オウムの終末論的な世界観、彼らが希求した(人間)関係のあり方などを検討すると、奇妙なことに気づく。インターネットの大衆的普及の前夜の日本の社会的・文化的な状況がわかるだけではなく、今まさに国際社会を舞台にして起きていること(たとえばトランプ現象)の本性が見えてくるのだ。現代社会で起きていることは、「オウム的なるもの」の、幻想の内容としては希釈された、しかし社会的な規模としては大幅に拡大された、(意図せざる)回帰のようなものとして解釈できる。
【開催日時】
2025年6月4日(水)18:10~19:40
【開催場所】
日吉キャンパス 来往舎1階 シンポジウムスペース
【定員】
約100名
【費用】
無料
【事前申込】
不要
【対象者】
研究者・教職員・関心のある学部生、大学院生
【主催】
慶應義塾大学教養研究センター
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