イベント

2026年3月12日(木)に第56回自然科学研究教育センター講演会(2025年度若手研究者賞受賞講演)を開催します。

【講演要旨①】
免疫系は、生体を外的から守るだけでなく、自己と非自己を識別することで個体の同一性を維持しています。この免疫学的自己が個体発生のどの段階で確立されるのかは、免疫学および発生生物学の根幹に関わる重要な問題ですが、無脊椎動物ではその成立過程はほとんど明らかにされていません。本講演では、ヒトデPatiria pectiniferaをモデルとして、免疫学的自己がいつ確立されるのかを、再構築キメラ個体を用いて検証した研究についてお話します。
ヒトデの胚・幼生期では、異なる個体由来の細胞を混合しても正常に発生が進行し、免疫学的な拒絶反応は認められません。一方、これらのキメラ個体が変態を経て稚ヒトデ期に達すると、最終的にすべての個体が死に至りました。これらの結果から、ヒトデの免疫学的自己は稚ヒトデ期に確立されることが明らかになりました。本研究は、棘皮動物において免疫系成熟の時期を初めて明確に示したものであり、無脊椎動物における自己・非自己認識機構の理解とその進化的背景を考える上で重要な知見を提供するものです。

【講演要旨②】
複雑なものを理解する際に、それをいくつかの単純な部分に分けて考えるという考え方は、私たちにとって自然な方法の一つだと思います。この考え方を4次元多様体(図形を4次元に抽象化した対象)に当てはめたものが、私の研究対象であるtrisection(トライセクション)です。4次元の1ハンドル体と呼ばれる単純な4次元多様体を3つ用いて一般の4次元多様体を分解することをtrisectionと言います。この分解を用いることで、4次元多様体が握る様々な情報を取り出すことが可能になります。例えば、4次元多様体は4次元の対象物なので当然私たちが視覚することはできません。しかし、trisectionによる分解の内、目に見える本質的な箇所のみを抜き出すことで、図式として4次元多様体を本質的に目で見えるようにすることができます。具体的には、曲面とその上のいくつかの曲線からなる図式で4次元多様体が可視化されます。この図式はtrisection diagramと呼ばれています。
本研究では、trisection diagramに関する問題の内、「4次元球面の任意のtrisection diagramは標準的であるか?」という問題を考察しました。4次元球面のtrisection diagramには様々な構成方法が存在しますが、本研究では、Gluck twistと呼ばれる4次元多様体の切り貼り操作により得られるある無限個のtrisection diagramを明示的に構成しました。また、そのように構成した4次元球面の無限個のtrisection diagramが全て標準的であることを、trisection diagramの変形を巧みに行うことで証明しました。
本講演では、これらの内容についてなるべく平易にご紹介したいと思います。

【開催日時】
2026年03月12日(木)16:00〜17:30

【開催場所】
日吉キャンパス 来往舎2階 大会議室

【講師】
①田口 瑞姫 氏
元自然科学研究教育センター所員・Postdoctoral researcher at Department of Molecular Biology, Umeå University, Sweden
②磯島 司 氏
自然科学研究教育センター研究員・日本学術振興会特別研究員

【参加対象者】
一般・学生・教職員

【費用】
無料(事前申込必要 、当日参加受付も可)

【事前申込】
必要 (申込はこちらから)

お申し込み内容等の詳細についてはこちらをご御覧ください。